大学生の卒業制作がプサン国際映画祭で驚きの4冠受賞!!
2005年プサン国際映画祭ニューカレンツ部門に招待された「許されざるもの」は“近年にない傑作”との前評判が広まり、瞬く間に上映分のチケットが完売するという事件を巻き起こした。
そして映画が上映されると観客や映画関係者に衝撃が走り、結果、同映画祭で最高の栄誉とされるPSB観客賞を筆頭にニューカレンツ部門特別賞、国際映画批評家連盟賞、NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)等、映画祭最多の4冠受賞という偉業を成し遂げたのである。
本作が何よりも映画関係者を驚かせたのには訳があった。この作品は全く無名の映画学科4年生の卒業作品だったからである。
監督のユン・ジョンビンは、執筆したシナリオをもとに、映画を製作する為KOFIC(韓国映画振興委員会)からインディペンデント映画製作の助成金1000万ウォンを得、さらにミジャンセン短編映画祭に出品した短編作品の賞金500万ウォンと自己資金500万ウォンを調達して完成に漕ぎ着けた。
映画「許されざるもの」は、KOFICの“多様性のためのマーケティング支援事業”作にも選定され、インディ作品に対するKOFICのサポート体制の良きモデル・ケースとなっている。
映画作家、俳優ユン・ジョンビンの登場は2005年韓国映画界最大の事件だ!
プサン国際映画祭で「許されざるもの」が上映された時の事。終了後、エンド・クレジットが上がりだした途端、場内に衝撃が走った。
映画の中でイジメられ役の新兵に扮し印象的な演技を披露していた俳優の名前が監督と同じだという事実に観客が気付いたのである。韓国の映画人にユン・ジョンビンという、才能に溢れた新人監督でありユニークな個性を持つ新人俳優の名前が刻みつけられた瞬間だった。
マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、ウディ・アレンといった映画作家が好きだったユン・ジョンビンは2005年2月に大学を卒業したばかりの27歳。彼は卒業作品として制作した本作で韓国映画界に激震を起こしたのである。軍隊経験を通して変わってしまった自分自身の内面や、除隊後に気がついた韓国社会に蔓延する軍隊式権力構造をテーマに映画を製作することを思いついた彼は、『軍隊の話なんて誰も観ない』という周囲の反対意見を押切り、見事な作品を作り上げた。