ファッション、家具、雑貨、音楽などで近年ますます注目度が高まっている北欧。そんな北欧のなかでもとりわけユニークな国、アイスランドで生まれた一本の映画が今、世界中で熱い支持を集めている。各国の映画祭で数多くの賞を獲得し、アイスランド・アカデミー賞(エッダ賞)では主要6部門制覇、2014年アカデミー賞外国語映画賞アイスランド代表にも選ばれた『馬々と人間たち』である。
春から秋にかけてのアイスランド。美しく雄大な自然を舞台に繰り広げられる、人と人、人と馬、馬と馬の愛の物語が、馬の視点で描かれる。男女の恋に馬同士の愛が絡んで複雑化したり、ウォッカのために愛馬と無謀な行動に出たり、馬とトラクターによる追跡劇が思わぬ形で決着したり……。馬の澄んだ穏やかな瞳に映る人間たちの姿は滑稽で愚かしく見えるが、それだけに一層、馬も人間も愛おしく思えてくる。
予測のつかないストーリー展開、悲劇も喜劇も馬も人も同等に描く語り口──まったく独自のスタイルで驚きと笑いと感動を呼び起こす、とびきりユニークな作品である。

監督と脚本は、アイスランド演劇界で最も成功を収めている人気演出家ベネディクト・エルリングソン。劇作家、俳優としても活躍しており、満を持して本作で長編監督デビューを果たした。演劇で磨きをかけた独特のユーモアのセンスが遺憾なく発揮されている。
製作は、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『春にして君を想う』(91)の監督として世界的に知られるフリズリク・ソール・フリズリクソン。永瀬正敏主演『コールド・フィーバー』(95)で日本との縁も深い。主演はアイスランドの代表的俳優イングヴァル・E・シグルズソンと、デンマーク出身の女優シャーロッテ・ボーヴィング。ともに本作の演技で高い評価を得た。
北極圏に近い海に浮かぶ小さな島国アイスランドは、独自の文化と豊かな自然を守り、世界平和度ランキング(Global Peace Index)と世界男女平等度ランキング(The Global Gender Gap Index)で堂々第1位に輝くなど、最近大きな注目を集めている。興味の尽きない魅惑の国から、午年の最後を飾るにふさわしい馬の映画がやって来た!

美しすぎる牝馬、情熱的な牡馬、主人思いがあだとなる優しい馬、ひたすら休息を欲する老馬……。人物たちに劣らず多彩なキャラクターを演じる小型の愛らしい馬たちは、いずれも〈アイスランド馬〉である。島国アイスランドで1100年以上も交雑することなく純血が保たれてきた。おとなしくて人好きのする彼らは、アイスランドの人々にとって家畜であると同時に家族や友人でもあり、ときには恋人のような存在にもなる。
日本ではこれまでほとんど知られる機会のなかったアイスランド馬だが、本作を通じて彼らの魅力に存分に触れることができる。特に村中の人と馬が集うラストの大団円は壮観だ。アイスランド馬が劇映画で主役を演じるのは、もちろんこれが初めてである。