監督プロフィール

監督・脚本:ロイストン・タン Royston Tan

1976年、シンガポール生まれ。
シンガポールのテマセック・ポリテクニック(Temasek Polytechnic)で、ヴィジュアル・コミュニケーションを学ぶ。
ミュージック・ビデオやCMなど短い時間で1つの世界を表現することに興味を持ち、自らも短編映画を作り始める。発表した短編は数々の映画祭で高い評価を受ける。

2002年に発表した『15』は、ストリート・チルドレンを描いて世界の映画祭で数多くの映画賞を受賞し、2003年に『15: The Movie』として長編化(初長編)。しかし、この作品は内容の過激さから一旦は国内での上映禁止になる(その後、シンガポール国際映画祭で一度だけの上映が許され、NETPAC賞/国際批評家連盟賞を受賞)。

2004年には、「TIME」アジア版で、インドの人気俳優シャー・ルク・カーン、シタール奏者のアヌーシュカ・シャンカール、日本の柳楽優弥、ドラえもんなどとともに、「アジアのヒーロー20人」に選ばれている。

札幌には度々招かれていて、2005年には、2ヶ月滞在し、『Monkeylove(モンキーラブ)』を制作。ショートショート フィルムフェスティバル 2005 in 北海道では、特集上映も行なわれた。また、同年、NHKとの共同制作で『4:30(フォーサーティ)』を発表。

3本目の長編『881 歌え!パパイヤ』は、第12回釜山国際映画祭でワールド・プレミア上映された後、シンガポールで公開されて2007年最大のヒット作となり(シンガポール国産映画としても歴代4位を記録)、2007年度アカデミー賞外国語映画賞シンガポール代表にも選ばれた。
作品ごとにテーマやスタイルが異なるが、社会から疎外された者や社会的弱者をモチーフに選ぶことが多い。
2008年には、クレモンフェラン国際短編映画祭とロッテルダム国際映画祭の審査員を務めている。

映画のほか、複数のミュージック・ビデオ、CM、TV作品を手がけている。
好きな監督としては、ウォン・カーウァイやエド・ウッドの名を挙げている。

フィルモグラフィー

※印は短編

『Remain』(1995)※

『Erase』(1996)※

『Adam.Eve.Steve』(1997)※

『Jesses』 (1999)※

『Sons』 (1999)※
疎遠になってしまった息子への思いを父の視点で描く。
2000年 シンガポール国際映画祭 短編シンガポール映画グランプリ(シルバー・スクリーン賞)&特別功労賞。
2001年 第23回東京ビデオフェスティバル(TVF)シルバー賞
日本では、アメリカン・ショートショート・フィルムフェスティバル2001、Movie-High2(2001)で紹介。

『Hock hiap leong』 (2001)※
60年代にはやり、今はもうドアを閉ざしている一軒のコーヒーショップについての映像詩。
2002年 ウプサラ国際短編映画祭 名誉賞
2002年 タンペレ国際短編映画祭 審査員特別賞

『Mother』 (2001)※
2001年 シンガポール短編映画祭 ザ・ヴォイス・アワード

「48 on AIDS」 (2002/TV作品)
2003年 ニューヨーク・フィルム&テレビジョン・アワード銀賞

『24 Hours』 (2002)※

『15』 (2002)※
5人の15歳の少年の冒険を描く。
2002年 シンガポール国際映画祭 特別功労賞
2002年 タイ国際短編&ビデオ映画祭 最優秀賞インターナショナル部門
2003年 ウプサラ国際短編映画祭 審査員特別賞(Film Jackdaw)
2003年 タンペレ国際短編映画祭 フィクション部門最優秀作品賞
2003年 オーバーハウゼン国際短編映画祭 特別賞
2003年 ニューポート国際映画祭 名誉賞
2004年 釜山アジア短編映画祭 コダック賞

『The Old Man and The River』 (2003)※

『177155』 (2003)※

『15: The Movie』(2003)
『15』の長編版。
2003年 シンガポール国際映画祭 国際批評家連盟賞・NETPAC賞
2004年 ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭 最優秀監督賞&SIGNIS Award スペシャル・メンション
2004年 ドーヴィル・アジア映画祭 審査員特別賞

『Cut』 (2004)※
検閲マニアの青年が、スーパーで買い物をしている“ミス検閲”をつかまえて、彼女がこれまでにシンガポール映画にしてきた悪業を暴露してしく、というパロディー・ミュージカル。自らの作品『15』が検閲でズタズタにされたという経験を元に企画された作品。
2004年 パナソニック・デジタル・フィルムメーカー賞 2005年 クレモンフェラン国際短編映画祭 Canal+賞
2005年 ウラジオストック太平洋メリディアン映画祭 最優秀短編賞
日本では、ショートショート・フィルムフェスティバル アジア2004 一般アジア ショートショート部門で上映。

The Blind 3部作 『Blind』、『Old Parliament House』、『Capitol Cinema』 (2004)※

『The Absentee』 (2004)※

「7th Month」(2004/TV作品)

『Careless Whisperer』 (2005)※

『New York Girl』 (2005)※

『Monkeylove(モンキーラブ)』 (2005)※
2005年にNPO法人S-AIRの招聘(2004年度ICCメディア・アート交流プログラム)で札幌に2ヶ月滞在した際に制作した作品。村岸宏昭さん扮するサルがウサギに心を盗まれるという物語。
2006年 フィッツロイ短編映画祭(オーストラリア) 観客賞
2007年 2006年 札幌国際短編映画祭(SAPPOROショートフェス)特別賞
2007年 クレモンフェラン国際短編映画祭グランプリ

『4:30(フォーサーティ)』(2005)
シンガポールで暮らす中国系の少年と、言葉が通じないのにも拘わらず、親代わりとなって彼の面倒を見る韓国系の男性についての物語。
NHKがアジア諸国の新進の監督と組んで映画を制作する国際共同制作プロジェクトの1つ。
2005年 NHKアジア・フィルム・フェスティバルにて上映。
2006年 ブラチスラバ国際映画祭グランプリ、ハワイ国際映画祭NETPAC賞
アジアフォーカス・福岡映画祭2006、第2回札幌国際短編映画祭(2007)でも上映された。

『D.I.Y』 (2005)※
第2回札幌国際短編映画祭(2007)にて上映。
ショートショート フィルムフェスティバル2007で最優秀コンテンポラリー・ショート賞&最優秀美術賞
DVD『SAPPORO SHORT FEST SELECTION vol.1 札幌国際短編映画祭2006-2007』に収録。

『Sin Sia Hong』 (2006)※

『881 歌え!パパイヤ』 (2007)
第12回釜山国際映画祭でワールド・プレミア。
第44回台湾金馬奨最優秀コスチューム・デザイン賞&メイク・アップ賞ノミネート

『After the Rain』(2007)※

『12Lotus』(2008)

ロイストン・タン監督、語る

ある日、ヤンヤンとミンディと私が「シンガポールで最もユニークなものは何だろう」と話をしていて、それは<歌台>じゃないかなあということから、映画はジョークのように始まった。 そのジョークを反復しながら、ボクはアタマの中で形を作り始め、その晩、家に帰ったときは、座ったとたんにあふれ出すアウトラインを書き留めないといけなかったぐらいだ。ボクのほかの映画と違って、『881 歌え!パパイヤ』は比較的スムーズに、苦労もなく作られた映画だと言えるだろう。

ボクはシンガポールにおける<歌台>の発展をずっと眺めてきた。両親がハングリー・ゴースト・フェスティバルのたびに<歌台>に連れていってくれていた子供のときから、友人と歌台ダンスを楽しんだ青年時代まで。歌台のカラフルな舞台とファンシーな衣装がとても好きだったんだ。ボクはシンガポールの<歌台>が持つ独自のフレイバーと、<歌台>の伝統的な曲目からボクの大好きな歌のいくつかを、映像の中に残しておきたいと思った。と同時に、福建人として、ボクはその方言に特に愛情を持っている。それはボクたちの民族が引き継ぐべき不可欠のものであり、若い観客たちが歌詞の中にその言葉の美しさを感じてほしいと思う。

そして、ボクがこの映画作りを楽しんだように、観客の皆さんにも映画を楽しんでいただけたら幸いだ。

ロイストン・タン

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