キング牧師

キング牧師没後50周年。

「自由と正義の国」アメリカの“黒人差別と暗殺”の歴史とは。

2017年初頭。トランプ政権がスタートしたアメリカで、一本の映画が異例のヒットを記録した。黒人文学のレジェンドであり、公民権運動家だった作家ジェームズ・ボールドウィンの視点によるドキュメンタリー『私はあなたのニグロではない』だ。本作はボールドウィンの未完の原稿「Remember this House」を基に、彼の盟友であり30代の若さで暗殺された公民権運動の指導者―メドガー・エヴァース、マルコムX、マーティン・ルーサー・キングの生き様を追いながら、60年代の公民権運動から現在のブラック・ライヴズ・マターに至るまでの、アメリカの人種差別と暗殺の歴史に迫ってゆく。監督のラウル・ペックは、映画で語られる言葉のひとつひとつをボールドウィンの本、エッセイ、インタビュー、講演など、彼が実際に発言した言葉を使って構成した。60年代と現在を交互に映し出す映像に、アメリカの現状を嘆き、鋭く批判するボールドウィンの言葉が重なり、50年経った今でも人種差別を巡る状況が変わらないことが浮き彫りになっていく。テレビCFやハリウッド映画に溢れる「正しく美しい」白人の姿と戯画化された黒人のイメージ。証言や豊富な記録映像を交え、強制的に作られた黒人への偏見の歴史、無知や先入観が引き起こす“差別の正体”を解き明かす様は衝撃的だ。